ジャック・ダニエルはバーボンでは無い。が、バーボンである理由。

「ジャック・ダニエルはバーボンではない」
ウイスキーに詳しい方からたまにこういう話を聞きます

アメリカのウイスキーはバーボンウイスキーのイメージが強く、
アメリカンウイスキー=バーボンウイスキー
と思われている方も多くいらっしゃいます。

つまりはアメリカのウイスキーであるジャック・ダニエルはバーボンウイスキーと思われている方が多くいらっしゃることに対して、冒頭の会話が出てくるわけです。

実際のところは、
"ジャック・ダニエルはバーボンウイスキーでは無い"
というのは正解です。

でも、見方を変えると、実はジャック・ダニエルはバーボンウイスキーとも言えるのです。
矛盾した説明に聞こえると思いますが、今回はジャック・ダニエル、そしてバーボンウイスキー、テネシーウイスキーの関係についてお話いたします。

ジャック・ダニエルとは

ジャック・ダニエル(ウイスキー)は、アメリカ合衆国テネシー州リンチバーグにあるジャック・ダニエル蒸留所で作られているウイスキーで、名前はこの蒸留所と製造メーカーであるジャック・ダニエル社の創始者でもある、ジャスパー・ニュートン・ジャック・ダニエル氏の名前から由来しています。

ジャック・ダニエル氏は貧困家庭の産まれであったことから、牧師の傍ら蒸留所のオーナーでもあったダン・コール氏のもとに幼少時から預けられ働いていました。

1863年には、当時13歳でジャック・ダニエル氏が、ダン・コール氏の持つ蒸留所を譲り受け、本格的に「ジャック・ダニエル」という名のウイスキーを作り始めました。

1904年には、ミズーリ州で開催されたセントルイス万博に【ジャック・ダニエル オールドN0.7】を出品、金賞を受賞しました。

以降、知名度・人気ともあがり続けましたが、1920年、アメリカ合衆国で禁酒法が施行されたことで蒸留所が閉鎖され、再建を試みるもブラウン・フォーマン社に買収されることとなりました。
しかし、紆余曲折がありながらも、ジャック・ダニエルの人気は根強く、現在、ジャック・ダニエル No.7は世界で最も売れているウイスキー銘柄となっています。

●チャコール・メローイング製法

チャコール・メローイング製法とは、ジャック・ダニエルの生産地でもある、テネシー州での伝統的な製法でもあり、蒸留後の原酒(ニューポット)を、サトウカエデの木炭が敷き詰められた濾過槽に少しづつ垂らしながら、ろ過を行う工程を言います。

この工程により、ジャック・ダニエルの特徴ともいえる、口当たりはなめらかで、カラメルのようなほろ苦さと甘さ、そしてコクが生まれます。

ジャック・ダニエルはバーボンウイスキーでは無い理由

ジャック・ダニエルがバーボンウイスキーでは無い理由は非常に単純で、ジャック・ダニエル自身がバーボンであることを否定しているからです。
ジャック・ダニエルはキャッチコピーに

"IT'S NOT SCOTCH. IT'S NOT BOURBON. IT'S JACK."
(スコッチでもない。バーボンでもない。ジャックダニエル)

と掲げています。
つまり、ジャック・ダニエル自身が「バーボンでは無い」と言っているわけです。

ラベルにもある通り、ジャック・ダニエルは"テネシーウイスキー"を名乗って販売されています。

ジャック・ダニエルがバーボンウイスキーと言える理由

上で、自らバーボンであることを否定していますが、ジャック・ダニエルは見方によってはバーボンウイスキーとも言えます。
その理由は、バーボンウイスキーの定義にあります。

バーボンウイスキーの定義はアメリカ合衆国の法律で以下のように決められています。

  • アメリカ合衆国で製造されていること
  • トウモロコシの含有量が51%以上であること
  • 蒸留時のアルコール度数は80%以下であること
  • 熟成には、新品のオーク樽を使用し内側を炭化皮膜処理(焦がして処理)すること
  • 熟成時、樽に入れる前のアルコール度数は62.5%以下であること
  • 瓶詰時のアルコール度数は40%以上であること

これらを満たすことで、法律上バーボンウイスキーを名乗ることが許されます。

そして、ジャック・ダニエルはこの条件を全て満たしています。
したがって、定義上はジャック・ダニエルはバーボンウイスキーと言えるのです。

一方、ジャック・ダニエルが自ら名乗っている、テネシーウイスキーの一般的な定義は、上記のバーボンウイスキーの定義に加えて

  • テネシー州で製造していること
  • 蒸留後の原酒をサトウカエデの木炭でろ過している(チャコール・メローイング製法を行っている)こと

の二つが加わります。
(テネシーウイスキーに明確な定義は無く、チャコール・メローイング製法を行わないテネシーウイスキーもあります)

定義上の観点では、ジャック・ダニエルは、テネシーウイスキーでありバーボンウイスキーでもある、というわけです。

バーボンウイスキーについてはこちらの記事に詳しく書いています。⇒【ウイスキーのお話し】バーボンとは。スコッチやウイスキーとは違うのか。

なぜジャックダニエルはテネシーウイスキーにこだわるのか

ジャック・ダニエルは、バーボンウイスキーと名乗れるにもかかわらず、単に名乗らないどころか

「IT'S NOT BOURBON」
と、はっきりと否定しています。

バーボンを名乗らない、というよりはわざわざ掲げられている、この否定に強い意志すら感じます。

この理由を探るには、テネシー州とバーボンウイスキーの発祥地であるケンタッキー州の歴史的関係が絡んできます。

1861年から1865年、アメリカ合衆国は南北で二分した大きな内戦、南北戦争がありました。

この時、テネシー州は南側につき、隣のケンタッキー州は当初南側でしたが寝がえり北側につきました。
結果、この二つの州の境目は最前線となり激しい戦いに巻き込まれテネシー州は壊滅的なほどの被害が出てしまいました。
一方で、有利に戦いを進めた北側についたケンタッキー州は軽微な被害で済みました。

この南北戦争真っただ中の1863年、13歳のジャック・ダニエル氏は蒸留所を譲り受け、本格的なウイスキー作りを始めたのでした。

ジャック・ダニエル氏は、故郷の苦難の中でウイスキー作りを始め、その背景からバーボンの名は使わず、あくまで故郷であるテネシー州のウイスキーとして名を挙げる強い思いを込めて、ウイスキー作りを行うようになったのでした。

最後に

今回は、ジャック・ダニエルについて、そしてテネシーウイスキーとバーボンウイスキーの関係についてお話してきました。

ジャック・ダニエルは、テネシーウイスキーでありながら、定義上はバーボンウイスキーとも言えます。

しかし、自らバーボンである事を否定し、テネシーウイスキーとして販売をしています。
これには、ウイスキー作りを超えた、歴史的苦難とそれに対する不屈の精神、そして強いアイデンティティーを主張している背景があります。

そんな思いに馳せながら、ジャック・ダニエルを飲んでみると、また一段と美味しく感じるのではないでしょうか。

世界の5大ウイスキーとは?それぞのれ特徴を解説

ウイスキーは世界中で作られていますが、中でも主要な生産地5か所で作られているウイスキーを総称して5大ウイスキーと呼ばれます。

5大ウイスキーとは

  • アイリッシュウイスキー(アイルランド)
  • スコッチウイスキー(スコットランド)
  • アメリカンウイスキー(アメリカ合衆国)
  • カナディアンウイスキー(カナダ)
  • ジャパニーズウイスキー(日本)

この5つを指します。

今回はこの5大ウイスキーそれぞれの特徴をご紹介します。

アイリッシュウイスキー

アイリッシュウイスキーとは、アイルランドで生産されたウイスキーです。

特徴はポットスチルウイスキーと呼ばれる、発芽した大麦麦芽と未発芽の大麦を混ぜてつくられるウイスキーを使用します。

風味は、ポットスチルウイスキー独特のオイリーさがありながら、3回蒸留(一部を除く)を行うことで雑味が少なく、すっきりとどんどん飲めてしまいます。

アイリッシュウイスキーの歴史は古く、5世紀から6世紀ごろに始まったと言われています。
19世紀ごろまでには世界で最も飲まれているウイスキーとして広がりましたが、その後主要な輸出国であるアメリカ合衆国で禁酒法が施行されたことをきっかけに、消費量は激減していきました。
しかし、現在も一時期ほどではありませんが、人気も回復しつつあり世界中で愛好者が多くいるウイスキーとなります。

関連記事:アイリッシュウイスキーとは。おすすめのアイリッシュウイスキーも紹介。

スコッチウイスキー

スコッチウイスキーは、スコットランドで生産されているウイスキーです。

スコッチウイスキーは、大きく2種類に分けることができます。

・シングルモルトウイスキー

消毒液のような風味から、フルーティだったり甘味があったりと一つの蒸留所のモルトウイスキーのみを使うことで、蒸留所ごとの個性が幅広く強く出やすいウイスキー。

・ブレンデッドウイスキー

複数の蒸留所で作られた、モルトウイスキーと、大麦以外の穀物を使ったグレーンウイスキーをブレンドし、すっきりと飲みやすいウイスキー。

ウイスキー好きの多くは個性の強いシングルモルトウイスキーを好む傾向がありますが、現在のようにスコッチウイスキーが世界的に広がったのは、安くて飲みやすいブレンデッドウイスキーが発明されたことが大きく影響しています。

関連記事:スコッチウイスキーとは?初めて飲む方へのおすすめも紹介

アメリカンウイスキー

アメリカンウイスキーとはアメリカ合衆国で生産されているウイスキーです。

アメリカンウイスキーの中でも、バーボンウイスキーが有名で18世紀後半、ケンタッキー州の牧師がウイスキー作りを始め、これがバーボンウイスキーの始まりでありアメリカンウイスキーの始まりとも言えます。

特徴は、主要な原料にトウモロコシを使い、新品のオーク樽の内側を焦がした樽で熟成させることです。
風味は力強く焦がし樽の独特のスモーキーさを感じさせます。

関連記事:【ウイスキーのお話し】バーボンとは。スコッチやウイスキーとは違うのか。

カナディアンウイスキー

カナディアンウイスキーはカナダで生産されているウイスキーです。

18世紀ごろ、農家が自分たちが作った穀物でウイスキー作りを始めたのが、カナディアンウイスキーの始まりとなります。
1920年、アメリカ合衆国で禁酒法が施工されると、それまでアメリカ国内で飲まれていた、アメリカンウイスキーやアイリッシュウイスキーが飲めなくなった代わりに、カナディアンウイスキーが大量に密輸され飲まれるようになったことで、いっきに広まりました。

風味はマイルドで飲みやすく、アルコールの角があまり無いため、クセの強いウイスキーが苦手な方にとって飲みやすいウイスキーとなっています。

関連記事:カナディアンウイスキーとは。味の特徴や歴史を解説。

ジャパニーズウイスキー

ジャパニーズウイスキーは、5大ウイスキーの中では最も歴史が浅いながらも、急激に日本国内だけでなく世界中で需要が増加し原酒不足となり、現在多くの銘柄で休売や終売が発表されています。

純国産のジャパニーズウイスキーは、1929年に寿屋(現在のサントリー)の山崎蒸留所で作られ販売された『白札』から始まりました。
寿屋は、スコットランドでウイスキー作りを学んだ、竹鶴政孝氏を招き、山崎蒸留所を建設、白札以降多くのウイスキーを生産しています。
竹鶴氏は、その後、寿屋を退職し自らニッカウヰスキーを立ち上げ、自分の理想とするウイスキー作りを目指しました。
サントリー・ニッカウヰスキー両社のウイスキーとも、2000年に入ったころから、世界的な賞を毎年のように受賞し人気が高まりました。

蒸留所や銘柄ごとに風味の特徴は幅広くさまざまですが、いずれも日本人に合う事を前提として作られています。

関連記事:ジャパニーズウイスキーとは?日本のウイスキーの歴史と現在のブームの背景も解説

ウイスキーが出来るまで。製造工程を解説。

【ウイスキーは穀物を原料とした蒸留酒】と説明されたりしますが、実際には非常に多くの工程と時間をかけて作られています。

今回は、大麦で作られるモルトウイスキーを例として、ウイスキーが出来るまでを解説いたします。

①製麦(モルティング)

【製麦】は、この後に出てくる、"発酵"という工程で、酵母菌によって糖分をアルコールに変化させますが、大麦自体はでんぷん質(糖分が連なって大きすぎて酵母菌が活動できない状態)のため、酵素を使ってでんぷんを糖分に分解させる必要があるのですが、この大麦から酵素をつくる作業が、製麦となります。

大麦を水に浸すと、芽が出て発芽し、ある程度芽が出てきたところで発芽を止めるため乾燥させます。

この発芽した状態を、大麦麦芽又はモルトと言い、大麦の中にデンプンを分解するための酵素が作られます。

この乾燥には、炭や薪、ガスで火を焚いて行います。
他にも、ピート(泥炭)という、土からとりだした炭のようなものを使って火を炊くと、独特のヨードやスモーキーな風味のウイスキーになります。ピートを炊いて作られた大麦麦芽をピーテッドモルトなどと呼びます。

②糖化・ろ過(マッシング)

【糖化】は、①の製麦で作られた、大麦麦芽(モルト)の酵素を使って、でんぷんを酵母が活動できる糖に変化させる工程となります。

作業は、大麦麦芽を粉砕し60~65℃の温水に浸し、かき混ぜます。
温水に浸されることで酵素が活動し、デンプンが分解され糖分(麦芽糖)に変わります。
これをろ過し、余計な麦芽のカスなどを取り除いて作られたものを、麦汁と呼びます。

③発酵

この【発酵】の工程で、ついにアルコールとなります。

②の糖化で作られた、麦汁に酵母という菌の一種を加えます。
この酵母は、菌なので生きており、餌も食べるわけですが、酵母菌の餌となるのが糖です。
酵母菌は、餌である糖を食べ、代わりにアルコールと二酸化炭素を排出します。

つまり、酵母菌により麦汁の中の糖がアルコールへと変化していくわけです。

この麦汁が発酵された状態を"もろみ"と呼び、アルコール度数は7%程度となります。

ちなみにビールは、同じ大麦を原料とした醸造酒であり、この時点ではビールに近い状態と言えます。
(ビールはこれに加えてホップなどを添加します)

④蒸留

蒸留は、発酵で作られた"もろみ"から、香味成分とアルコール度数の高い液体を抽出する作業となります。

仕組みは、アルコールの沸点が78℃で水の沸点である100℃より低い性質を利用します。

蒸留器と呼ばれる、銅製の大きな窯のようなものの中にもろみを入れ、アルコールの沸点以上、水の沸点に達さない範囲で加熱することでアルコールが先に水蒸気となりその水蒸気を冷却し再び液体にすることで、香味成分とアルコール度数の高い液体を抽出します。

とはいえ、1回の蒸留では、アルコール度数は20度程度であるため、通常は2回か3回繰り返し蒸留を行い、60~70度程度までアルコール度数を上げます。
蒸留の回数3回と2回では、3回蒸留をした場合は、より雑味が少なくすっきりとした味わいになり、2回だけの蒸留ではより個性の強いウイスキーとなる傾向があります。

また、蒸留器の形や加熱方法などでも風味は変化してきます。

この工程で作られたアルコール度数の高い液体を"ニューポット"と呼びます。

⑤熟成

熟成では、蒸留することで作られた、ニューポットを樽に入れ、長期間貯蔵します。

ニューポットは無色透明ですが、熟成されることで樽の成分がうつり、琥珀色へ変化します。
色だけでなく、味や香りも熟成期間と共に変化していき、熟成期間が長いほどアルコールの角もとれ、まろやかな風味になる傾向があります。

樽の木材には、ホワイトークやスパニッシュオーク、ミズナラなどがよく使われます。
またワインやシェリー酒の熟成に使った樽を使いまわしたり、新樽の場合、内側を火で炙り焦がした樽を使うなど、樽によってもウイスキーの個性が左右されていきます。

⑥加水・ヴァッティング(ブレンド)

熟成されたウイスキーは、このままではアルコール度数が非常に高いため、40度~50度程度になるように加水され、ヴァッティングという作業を行います。

ヴァッティングとは、多くの樽で熟成されているウイスキーから、風味の調整をするためにブレンドする事を言います。
シングルモルトウイスキーは、一つの蒸留所内で熟成された樽からヴァッティングを行い、ブレンデッドモルトウイスキーでは、複数の蒸留所で熟成された樽からヴァッティングします。

この作業はブレンダーと呼ばれる特別な技能を持った一部の技師によって行われ、ウイスキー作りの中でも花形の仕事と言えます。

また、樽ごとの個性を楽しむために、あえて、ブレンドせずに一つの樽からのみで瓶詰めされたものもあり、これを"シングルカスク"と呼びます。

ヴァッティングを行われたウイスキーは瓶詰され出荷となり、晴れて私たちの手に渡るようになります。

ジャパニーズウイスキーとは?日本のウイスキーの歴史と現在のブームの背景も解説

ジャパニーズウイスキー、つまり日本のウイスキーは、もともとの世界的な評価はそれほど良くなく、スコッチなどに比べて品質が悪いとされていました。

それが、2000年以降次々と世界的賞を受賞し、日本国内だけでなく世界的に急激に人気が上がり、ここ数年は生産が追い付かず国内メーカー各社とも、あいついで休売・終売が発表されています。

今回はそんなジャパニーズウイスキーとはそもそもどんなウイスキーなのか、そして、始まりから現在の5大ウイスキーの一角となるまでの歴史や背景についてもお話していきます!

ジャパニーズウイスキーとは

ジャパニーズ・ウイスキーの定義は、スコッチ(関連記事)やバーボン(関連記事)などと違い、法律で明確に定められているわけではありません。

酒税法上は、10%ウイスキーが入っていれば、あとは他のスピリッツなどでブレンドされていてもジャパニーズウイスキーと言えてしまう程、緩いものとなっています。

また、産地の表記なども必要が無いため、海外で蒸留されたウイスキーを日本で熟成して瓶詰してもジャパニーズウイスキーとして販売が可能となっています。

つまり、国外で蒸留されたウイスキーを10%あとの90%をウォッカでブレンドしたものも日本で瓶詰めすれば、ジャパニーズウイスキーとして販売が可能となっています。

●ジャパニーズウイスキーの定義化の動き

上記のように法的に厳密な定義が無いことから、消費者へ誤解を与えてしまうなど、問題視する声が大きくなってきたことで、民間レベルでジャパニーズウイスキーの明確な定義に向けての動きが出てきました。

2019年には、ウイスキー・スピリッツの品評会である、東京ウイスキー&スピリッツコンペティションよりジャパニーズウイスキーを以下の3つカテゴリに分けて定義が発表されました。

①ジャパニーズウイスキー(日本ウイスキー)

  • 原料は穀物で、大麦麦芽の酵素または天然由来の酵素によって糖化を行う。
  • 酵母によってアルコール発酵を行う。
  • アルコール度数95%未満で蒸留を行う。
  • 熟成は木製の樽または容器で2年以上行う。
  • 瓶詰時のアルコール度数は40度以上で、色素調整のための天然カラメルの添加は認めらる。

これらを全て満たし、日本国内の蒸留所で、糖化・発酵・蒸留・熟成が行われているもの。

②ジャパニーズニューメイクウイスキー(日本ニューメイクウイスキー)

熟成期間が2年未満で、そのほかの条件は、①ジャパニーズウイスキーの条件を全て満たしているもの。

③ジャパンメイドウイスキー(日本製ウイスキー)      

外国産のウイスキーをジャパニーズウイスキーとブレンドし日本国内で瓶詰したウイスキー。
"外国産のウイスキー"については、穀物を原料とした蒸留酒で木製の樽または容器で熟成したものであること。

ジャパニーズウイスキーの種類

ジャパニーズウイスキーには、原料の違いによっても種類がわけられます。

●モルトウイスキー

大麦麦芽(モルト)のみを原料とし単式蒸留器で作られたウイスキー。
一つの蒸留所で作られたモルトウイスキーのみを瓶詰したものをシングルモルトウイスキー、複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドして瓶詰したものを、ブレンデッドモルトウイスキー(ピュアモルトウイスキー、ヴァッテッドモルトウイスキー)と呼ぶ。

モルトのみでかつ単式蒸留のため、それぞれ個性が強く出やすいのが特徴。

●グレーンウイスキー

大麦麦芽に加えて、トウモロコシ・ライ麦・小麦など他の穀物も原料とし、連続式蒸留器で蒸留されたウイスキー。
複数の原料をブレンドしかつ連続式蒸留器で蒸留されることで、すっきりとした風味で飲みやすいのが特徴。

●ブレンデッドウイスキー

モルトウイスキーとグレーンウイスキーを複数種類ブレンドしたウイスキー。
モルトウイスキーの個性をしっかりもたせながら、グレーンウイスキーをブレンドすることで飲みやすく作られているものが多い。

ジャパニーズウイスキーの味・特徴

ジャパニーズウイスキーにも多種多様ではありますが、全体的な傾向としては、スコッチの流れを汲みながら、日本人の嗜好に合わせて飲みやすいウイスキー作りがされています。

また、ジャパニーズウイスキー広がりとともに飲み方も日本独自で発展し、ソーダ割り(ハイボール)、水割りやお湯割りといった多様な飲み方をされることも海外に比べて特徴的です。

日本のウイスキー誕生の歴史

日本にウイスキーが伝わったのは、1853年、江戸末期にアメリカ合衆国のマシュー・ペリー氏率いる艦隊が日本の開国を求めて浦賀に来た時、日本の幕府関係者にウイスキーを振舞ったり、徳川幕府に献上されたと言われています。

その後、1871年にはウイスキーの輸入が始まりましたが、明治に入ってもそれほど広まってはいませんでした。

1899年、鳥井信治郎氏により、のちにサントリーとなる、当時は洋酒の輸入販売と捏造ウイスキーを製造販売を主に行っていた、鳥居商店が創業しました。

鳥居商店は1906年には寿屋洋酒店に名前を変更し、赤玉ポートワインやトリスウイスキーといったヒット商品を出すようになりましたが、鳥居氏は、さらに純国産のウイスキー製造をするため、国内に蒸留所を建てる事を目指すようになりました。

一方、1918年、大阪府のにあった摂津酒造でも同様に純国産ウイスキーを作る計画が立ち上がり、摂津酒造の技師であった竹鶴政孝氏がウイスキー作りを学ぶためスコットランドに派遣されました。

竹鶴氏は帰国後、スコットランドで学んだ内容を報告書にまとめ会社提出しましたが、摂津酒造は資金難に陥っており、国産のウイスキー作りは断念しざるを得ず、竹鶴氏は志半ばで摂津酒造を退職する事となりました。

大正時代に入り、寿屋は蒸留所の建設のため技師を探していたところ、当初はスコットランドから技師を招く予定でしたが、スコットランドで学んでいた竹鶴氏が帰国していたことを知り、竹鶴氏も国産ウイスキー作りの夢を捨てていなかったことから、1923年に寿屋への入社が決定しました。

1924年には、寿屋は大阪府三島郡に山崎蒸留所を建設、蒸留を開始しました。
1929年、この山崎蒸留所で作られた、日本初の国産ウイスキー『白札』が販売開始、1937年には『角瓶』が発売され、国産ウイスキーの歴史が始まりました。

竹鶴氏は、1934年、当初の寿屋との契約期間10年が経ち、また竹鶴氏自身で理想のウイスキー作りを目指すため、寿屋を退職、大日本果汁(現在のニッカウヰスキー)を設立、北海道の余市に余市蒸留所を設立し、1940年にこの余市蒸留所で作られた『ニッカウヰスキー』を販売しました。

戦後も多くの国産ウイスキーが販売され、日本の復興、高度経済成長に合わせるように国産ウイスキーの需要も多少の上がり下がりはありながらも少しずつ増え続けていましたが、2010年以降は急激なブームとなり、多くのウイスキーが供給が追い付かないほどとなりました。

今や、日本国内だけでなく世界的に日本のウイスキーの人気が高まり、アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、カナディアンと並んでジャパニーズウイスキーとして5大ウイスキーの一つとして呼ばれるようにまでなりました。

ジャパニーズウイスキーブームの理由

ジャパニーズウイスキーの誕生から、時代と共に徐々には需要が上がってきましたが、2010年に入ってからは急激な需要の増加となり、生産が追い付かず終売・休売を余儀なくされるウイスキーが多く出てきています。

このジャパニーズウイスキーブームの理由は大きく以下の3つが考え得られます。

■ハイボールブームによる需要増加
もともとウイスキーは、食事中心の1件目ではなく、ドリンク中心の2件目、3件目としてバーなどで飲まれていました。
ここにサントリーなどが、ソーダで割る(ハイボール)などで食事と合わせて飲む形でプロモーションを積極的に行い、近年の健康ブーム、糖質制限ダイエットの流れもあり、1件目の食事と一緒にハイボールを飲むという文化が定着しました。

NHK朝ドラ『マッサン』による認知効果
2014年から2015年にかけてNHKで放送された朝の連続テレビ小説『マッサン』でニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏が取り上げられたことで、それまでウイスキーに馴染みがなかった人たちにも、ニッカウヰスキーをはじめ国産ウイスキーが認知されるようになりました。

世界的賞の受賞により海外での需要の高まり
2000年以降、ニッカウヰスキーやサントリーのウイスキーを中心に、世界レベルの権威ある賞を毎年のように受賞するようになりました。
これにより、それまで日本のウイスキーはそれほど評価が高くなかった海外でも、見直され多く飲まれるようになりました。

ウイスキー作りには、どうしても熟成期間が必要なこともあり、10年、20年先を見て作る必要がありますが、あまりにも急激なブームのだったため、生産計画とズレが出来てしまい、現在の供給不足という結果になっています。

現在各社とも、増産に動いていますが、世の中に出回るにはまだ数年から10年程度かかる見込みです。

代表的なジャパニーズウイスキーの銘柄

●響

2004年のISC金賞(響21年)、最高賞(響30年)の受賞に始まり、毎年のように世界的賞を受賞し続けていた、日本を代表するブレンデッドウイスキーです。

山崎蒸留所、白州蒸留所のモルトウイスキーと知多蒸留所のグレーンウイスキーをブレンドしており、味はフルーティで甘みのある味にほんのりとスモーキーに、香りはコルクを抜いた瞬間から一気に華やかで甘い香りにつつまれます。

現在のラインナップは、サントリーの公式ホームページ上では、
ノンエイジのジャパニーズハーモニー、ブレンダーズチョイスと、響21年、響30年となっていますが、いずれも品不足気味となっています。

●山崎

山崎蒸留所で作られているシングルモルトウイスキー。
発売当初、日本ではブレンデッドウイスキー全盛で一部の愛好家に飲まれる程度にとどまっていましたが、徐々に山崎の良さが受け入れられ人気が出るようになりました。
ジャパニーズシングルモルトウイスキーの牽引役のような存在とも言えます。

バニラやシナモンのような甘味と桃のような甘くフルーティな香りが特徴。

現在のラインナップは
ノンエイジの山崎と、山崎12年、山崎18年、山崎25年。

●竹鶴

ニッカウヰスキーの創業者の名前が付けられた"ピュアモルトウイスキー"

ピュアモルトウイスキーとは、複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーをブレンドして作られたものを指します。
モルトウイスキーでありながら、ブレンドされることで非常に飲みやすいのが特徴。

味は梨のようなフルーティさの奥に余市蒸留所のウイスキーを連想させるスパイシーさをかすかに感じます。

2020年3月でそれまでのラインナップであった、
竹鶴17年、竹鶴21年、竹鶴25年が休売、ノンエイジの竹鶴がリニューアルされます。

竹鶴についてはこちらの記事に詳しく書いています⇒ウイスキー竹鶴とは。終売の背景と竹鶴氏・ニッカウヰスキーについても解説。

カナディアンウイスキーとは。味の特徴や歴史を解説。

世界5大ウイスキーの一つ、カナディアンウイスキーをご存知でしょうか。

バーボンやスコッチは聞いたことあっても、カナディアンは聞いたことない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は世界で2番目の生産量を誇り、多くの人々に愛されているウイスキーでもあるのです。

今回は、そんなカナディアンウイスキーの特徴や現在のように世界で広まった歴史についてお話しいたします!

カナディアンウイスキーとは

カナディアンウイスキーは一言でいうと、"カナディアン"つまり、カナダのウイスキーを指します。

もう少し明確には、カナダの法律で主に以下のように定義されています。

  • 穀類のみを原料としている
  • カナダ国内で、糖化、アルコール発酵、蒸留が行われている
  • カナダ国内で木製の樽にて最低3年以上熟成されている
  • 瓶に詰められた時点でのアルコール度数は40度以上である
  • カラメルまたは香味(フレーバリング)は添加しても良い

これらの条件をクリアすることで、カナディアンウイスキーと名乗ることが出来ます。

●カナディアンウイスキーの味わい・特徴

カナディアンウイスキーの味の特徴は、とにかくマイルドで飲みやすい事。
アルコールの角やキツさが非常に少なく、どんどん飲めてしまう印象です。

クセがほぼ無いので、特にウイスキー初心者の方には、カナディアンウイスキーから初めてみるのが良いと思います!

●カナディアンウイスキーの種類

カナディアンウイスキーには大きく以下の種類があります。

・ベースウイスキー

主にトウモロコシを原料として、連続式蒸留器で蒸留を行われており、風味はべースウイスキーだけではほぼ個性がありません。
上記のカナディアンウイスキーの法律上の定義で、『香味(フレーバリング)は添加しても良い』とありましたが、このフレーバリングのために使われるウイスキーのため"ベース"と呼ばれています。

・フレーバリングウイスキー

ライ麦や大麦など麦類を原料としており、フレーバリングという名前の通り、麦が持つ香りや油っぽさを持ち、しっかりと個性のあるウイスキーです。
このフレーバリングウイスキーで言う"フレーバリング"は、上記のベースウイスキーに香味などを添加するフレーバリングとは別となります。

・カナディアンブレンデッドウイスキー

上記の、ベースウイスキーとフレーバリングウイスキーをブレンドしたウイスキーとなります。
ほとんどのカナディアンウイスキーは、このカナディアンブレンデッドウイスキーとなり、ベースウイスキーにどのようにフレーバリングするかや、さらにフレーバリングウイスキーとの割合などでそれぞれの個性が作られていると言えます。

●カナディアンウイスキーの歴史

カナディアンウイスキーの始まりは、はっきりとした史料などはありませんが、18世紀後半ごろと言われています。

この頃からカナダは、農業大国であり穀物が多く作られていました。
この豊富な穀物を元に、農家が副業としてウイスキー作りを始めたものがカナディアンウイスキーの始まりとなります。

その後、ウイスキー作りを専業とする蒸留所も増え、19世紀に入る頃には200以上も蒸留所があったとされています。
しかし、このころのウイスキーはほとんど熟成されず蒸留後すぐに出荷されており、「one day whisky」と言われるほど品質も良くありませんでした。

19世紀後半になると、連続式蒸留器の導入やそれまで麦類が主な原料だったところに、トウモロコシも使用されるようになるなど、現在のカナディアンウイスキーに近いものが作られるようになりました。

カナディアンウイスキーの大きな転機は1920年、隣の国でありウイスキーの世界最大の消費国でもあったアメリカ合衆国で禁酒法を施行されたことです。
これによりアメリカ国内でのお酒の製造や輸送が出来なくなり、また輸入も禁止されるようになりました。

禁酒法により、アメリカ国内のウイスキー産業は衰退し、それまでよく飲まれていたアイリッシュウイスキーも輸入が出来なくなってしまった中、代わりにカナディアンウイスキーは密かにアメリカに持ち込まれ飲まれるようになりました。

アメリカ国内でのウイスキーの製造や、海外からの船での密輸は摘発されるリスクが大きかったのに対して、カナダ国内では合法的にウイスキー作りが行え、アメリカ合衆国とは隣接している面積も大きく、アメリカ国内への密輸がしやすかったことで、いっきにカナディアンウイスキーが広まりました。

その後1933年に禁酒法は撤廃されましたが、一度作らなくなったアメリカ国内のウイスキーはすぐに販売できる状態ではなく、カナディアンウイスキーの特徴である、クセがなく飲みやすいところが、アメリカ人にも受けた事もあり、正規の輸入品として愛され、ここから世界的にも広く飲まれるようになっていきました。

第二次世界大戦後も、カナディアンウイスキーは好調を維持していましたが、1980年代カナダ国内でのアルコールに対する販売の規制や課税が厳しくなり、カナディアンウイスキーにとっては厳しい状況が続いていましたが、一度広まったカナディアンウイスキーは現在も世界的に支持されており、近年はまた復活の兆しが見えてきています。

代表的なカナディアンウイスキー、カナディアンクラブ

日本でカナディアンウイスキーといえば、だれもがこのカナディアンクラブを思い出すと思います。
略してCC(シーシー)と言われたりもします。

カナディアンクラブの誕生は1858年、アメリカの禁酒法が施行されるよりも前に、それまで樽単位の販売だったものをボトルで販売したり、保証書をつけ品質の良さをアピールすることで、人気を得ていました。

当初は「one day whisky」とも言われるほど粗悪とされていた当時のカナディアンウイスキーの中で、カナディアンクラブの信頼と味はアメリカで不動の人気となり、禁酒法時代、世界大戦後、そして今に至るまで愛されているウイスキーとなります。

カナディアンクラブは、カナディアンウイスキーの例に漏れず、まろやかで飲みやすく、バニラのようなリッチな甘さと、柑橘系の華やかな香りが特徴となります。
1にも2にも飲みやすく、そして華やかさがあり、アルコールの感じが苦手な方や、すっきりと飲みたい方に特におすすめできます。

中でも「カナディアンクラブ クラシック12年」は、上記のようなカナディアンらしい特徴をしっかりと持ち、そしてリーズナブルでコストパフォーマンスの素晴らしいウイスキーとしてよくおすすめさせていただいています。

ウイスキー竹鶴とは。終売の背景と竹鶴氏・ニッカウヰスキーについても解説。

つい先日、国産の人気ウイスキー、竹鶴の17年、21年、25年の3月末での終売が発表されました。
また、ノンエイジの竹鶴も同時期にリニューアルされるそうです。

今回は、人気がありながら終売が決定されたウイスキー竹鶴と終売の背景、そして製造メーカーであるニッカウヰスキーや創業者の竹鶴政孝氏についてもお話ししていきたいと思います。

竹鶴とは

竹鶴はニッカウヰスキーが「ブレンデッドウイスキーのように飲みやすいピュアモルトウイスキー」を目標に開発・製造したジャパニーズウイスキーです。

ウイスキーの名前でもある"竹鶴"は、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏からとられており、ニッカウヰスキーはもとより日本を代表するウイスキーの一つとなっています。

●ピュアモルトとは。シングルモルトとの違いは?

竹鶴のラベルには"竹鶴"の文字の下に大きく【PURE MALT】と表記されています。
ピュアモルトとは、原料にモルト(大麦麦芽)のみを使用したウイスキーを指します。

シングルモルトとの違いは、シングルモルトは一つの蒸留所(シングル)で製造されたウイスキーのみで瓶詰されているのに対して、ピュアモルトは、複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーをブレンドして作られています。

複数の蒸留所のウイスキーを混ぜてますが、100%モルトなので【ピュアモルト】というわけです。

竹鶴については、北海道の余市蒸留所、宮崎県の宮城峡蒸留所などのモルトウイスキーがブレンドされていると言われてます。
(はっきりとは公表されていません)

世界的には、現在はピュアモルトウイスキーではなく、"ブレンデッドモルトウイスキー"と言われることが一般的となっており、そのほか"ヴァッテッドモルトウイスキー"と言われることもあります。

●竹鶴の味・特徴

「ブレンデッドウイスキーのように飲みやすいピュアモルトウイスキー」という開発目標の通り、アルコールの角が少なく、ほのかな果実の風味を感じ、雑味などもなくすっきりと飲みやすくそして華やかさのあるウイスキーとなっています。

当店では、ウイスキーに飲み慣れていない方で、でもウイスキーに興味を持たれている方にもよくお勧めしています。
じゃあ、ウイスキーに飲み慣れた人は満足出来ないかというと、そんなことはなく、飲みやすいながらも余市の特徴でもある力強さと、 宮城峡の特徴である、果実の風味がある華やかさが絶妙なバランスでうまくブレンドされており感心していただけると思います。

複数の蒸留所のウイスキーを混ぜる事で、アルコールの角が少なくなり、まろやかになる事が活かされた"ピュアモルト"らしい風味とも言えます。

●竹鶴終売の背景

終売の理由は、"原酒の在庫不足"と発表されています。
原酒不足、つまりは人気が出てきて、生産が追い付かないため、販売が出来なくなってしまったわけです。

人気が出てきた理由としては

  • 国際的賞の受賞などで、海外でのジャパニーズウイスキーの需要が増えている
  • NHKの朝ドラ「マッサン」により国内需要も高まる

といったことが重なり、この数年急激に人気が出てきました。
私も一昨年、余市蒸留所に見学に行った際、平日にもかかわらず人が多く、中でも中国の方が非常に多く来られていた事に驚いたのを覚えています。

では、すぐに生産量を増やして販売すればいいじゃないか、というとそう簡単でもなく、難しい経営判断が迫られます。
主な課題として以下の2点があげられます。

・生産量の増強には大きな投資が必要

ウイスキーを作るには、糖化・アルコール発酵・蒸留といった複雑な工程があり、それぞれに大掛かりな設備が必要となります。
これらを新たに増やすには、多大な資金と時間がかかります。

・ウイスキー作りには莫大な時間がかかる

ウイスキーの蒸留までが出来たとして、ウイスキーはそこからさらに樽に詰めて熟成を行います。
この熟成期間がそのまま商品名に"17年"や"21年"と入りますが、逆に言うと竹鶴17年は、最低でも17年の熟成が必要になるわけです。

これら二つの理由により、ウイスキー作りには、10年後、20年後の需要を予測しながら今、大きな投資をするかどうかという非常に難しい経営判断が必要となります。

莫大な投資を行い、労力と時間をかけて生産能力を増やしたとして、販売される10年後20年後に今以上に需要が無ければ、その投資は無駄となり、場合によっては会社の存続危機にもなってしまいます。

現在の原酒不足も、ここ数年の急激な人気上昇によるもので、竹鶴の販売が開始された20年ほど前(2000年)には今のような状況を論理的に予測できた人はいないのではないでしょうか。

現在、ニッカウヰスキーは生産設備の増強をすすめていますが、この増強により作られたウイスキーが世に出るのはまだ先となると考えられます。

ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏とは

竹鶴政孝氏は"日本のウイスキーの父"とも呼ばれ、日本で純国産ウイスキー作りを定着させた功労者でもあります。

1894年6月20日、広島県の酒造業を営む家の三男として生まれました。

竹鶴氏は、大阪高等工業学校(現大阪大学)の醸造科で学び、大阪府内の摂津酒造(その後、宝酒造と合併)に入社し、洋酒部門に配属されました。
当時、日本では純国産のウイスキーは作られておらずノウハウも無かった事から、会社の命で、スコットランドにウイスキー作りを学ぶため留学。

帰国後、摂津酒造にて純国産のウイスキー作りを始めようとしましたが、会社の資金難により純国産ウイスキー作りは叶わず1922年に退社しました。

退社後、一時期は化学の教師となっていましたが、1923年、洋酒の製造販売をしている寿屋(現サントリー)が国産ウイスキーの製造を企画した際、スコットランドでウイスキー作りを学んでいた竹鶴氏を招きいれました。

竹鶴氏は、山崎蒸留所の初代所長になるなどウイスキー作りに励む一方、後輩技師の教育にも尽力し1933年寿屋を退社、1934年に自ら大日本果汁(現ニッカウヰスキー)を設立しました。

ニッカウヰスキーとは

竹鶴政孝氏は、寿屋を退社後、自分がウイスキー作りを学んだスコットランドと気候が近い北海道余市で、大日本果汁(現ニッカウヰスキー)を創業しました。

大日本果汁の由来は、ウイスキー作りには、生産開始から販売まで少なくとも数年はかかるため、それまでの間、地元余市の特産であったリンゴをつかったジュースなどを生産販売していたため、"大日本果汁"という社名となりました。

1940年には、ウイスキーの販売を開始。このウイスキーの名前を、リンゴジュースの商品名に『日果』としていたことから、『ニッカウヰスキー』と名付けました。
1952年には、社名もニッカウヰスキーに変更されました。

ちなみに、社名に入る"ヰ"は、ウイスキー作りには水が欠かせない事から漢字の井戸の"井"を使おうとしたが、当時カタカナと漢字を合わせた社名は登記ができなかったため、見た目が似ていてカタカナとして使われていた"ヰ"を使用したそうです。

その後、ニッカウヰスキーは多くのウイスキーを世に出し続け、1979年創業者である竹鶴氏はこの世を去りますが、その意思を受けついだ後輩技師たちによって2000年にウイスキーの竹鶴が販売されました。

最後に

ここまでウイスキー竹鶴と、その名前の由来となった竹鶴政孝氏、製造メーカーのニッカウヰスキーについてお話してきました。

竹鶴というウイスキーには、日本のウイスキーの歴史とも言える多くの背景が詰まっていることがわかっていただけたのではないでしょうか。

また、純粋に味を楽しむという意味でも、飲みやすく優しい華やかさがあり、バランスが良くすばらしいウイスキーであると感じさせてくれます。

素晴らしいウイスキーだからこそ、そのレベルに達さないものを販売するわけにもいかず、ニッカウヰスキーにとっても苦渋の判断だったと思いますが、今回終売という残念なニュースが発表されました。
当店でも、おそらく今残っている17年、21年がいったん最後になると思います。

ノンエイジの竹鶴についても、リニューアルということでいくらか中身が変わる可能性がありますが、おそらく竹鶴という名前に負けない素晴らしいものを販売し続けてくれると信じています。

いつの日か、また素晴らしくなった17年や21年に出会える日を楽しみにしながら、竹鶴を飲み続けたいと思います。

この時期しか出来ない楽しみ方としては、ノンエイジの新旧飲み比べなんてのも面白いのではないでしょうか!

アイリッシュウイスキーとは。おすすめのアイリッシュウイスキーも紹介。

5大ウイスキーという言葉がありますが、その中の一つ『アイリッシュウイスキー』をご存知でしょうか。

同じく5大ウイスキーでもある、スコッチやバーボンと比べると、少し知名度が劣るような気もします。
しかし、一時期までは世界でトップシェアを誇るウイスキーでした。

それがなぜ現在はスコッチなどに比べて大きくシェアで劣るようになってしまったのでしょうか。
一方で、当店でもアイリッシュウイスキーしか飲まれないといったお客様も何人もおられ、今もなお根強く愛されています。

今回は、一時代を築き時代に翻弄されながらも、今も根強く愛されているアイリッシュウイスキーについてお話いたします。

アイリッシュウイスキーとは

アイリッシュウイスキーについては、アイルランド共和国のアイリッシュウイスキー法(Irish Whiskey Act, 1980)にて定義されています。

主な内容は以下の通りです。

・アイルランド共和国ならびに北アイルランドにて、穀物の糖化、アルコール発酵、蒸留されているもの
・アイルランド共和国ならびに北アイルランド内の倉庫において、木製の樽で3年以上熟成されたもの

細かくはもっと定義がされていますが、アイルランドで作られ3年以上熟成されたウイスキーをアイリッシュウイスキーと呼んでいます。

●アイリッシュウイスキーの種類

アイリッシュウイスキーの種類として以下のようなものがあります。
モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーはスコッチでもおなじみですが、ポットスチルウイスキーはアイリッシュの特徴的な製法と言えます。

・モルトウイスキー

大麦麦芽(モルト)のみを使ったウイスキー。

・グレーンウイスキー

トウモロコシやライ麦、小麦など大麦以外の穀物(グレーン)を使ったウイスキー。

・ブレンデッドウイスキー

モルトとグレーンを混ぜた(ブレンド)したウイスキー。

・ポットスチルウイスキー

大麦麦芽(モルト)と未発芽状態の大麦を混ぜたウイスキー。
背景には、麦芽税という麦芽に対する課税があり、この負担を減らすため麦芽の割合を減らし、未発芽の大麦を混ぜるという苦肉の策から始まったわけですが、この結果、生の大麦が入ることで、オイリーで穀物の風味をしっかり感じさせてくれるアイリッシュの特徴ともいえるウイスキーが作られるようになりました。

ポットスチルウイスキーのみのウイスキーを、ピュアポットスチルウイスキー又はシングルポットスチルウイスキーと呼びます

●アイリッシュウイスキーの歴史

アイルランドでのウイスキーの始まりは諸説あります。

  • 4世紀から5世紀にかけてアイルランドにキリスト教を広めた、聖パトリックがキリスト教とともに蒸留技術を伝え、これを元に蒸留酒が作られるようになった。
  • 6世紀ごろ、アイルランドの修道僧が中東へ訪れた際に、蒸留技術を学び持ち帰り蒸留酒が作られるようになった。

いずれにしても外国から伝えられた蒸留技術を酒造に使うようになり、蒸留技術の発達とともに、ウイスキーがつくられるようになりました。

その後アイルランドのウイスキー作りはみるみる広がり、18世紀ごろには2000もの蒸留所が存在し、アイリッシュウイスキーは世界のウイスキー市場で最も飲まれるウイスキーとして広まっていました。

しかし、1920年、アイリッシュウイスキーが最も飲まれていたアメリカ合衆国で禁酒法が施行され、消費のためのアルコールの製造、販売、輸送が全面的に禁止され、このあおりを受けアイリッシュウイスキーの生産・販売規模が縮小されました。

その後、禁酒法は撤廃されたものの、第二次世界大戦時には、アイリッシュウイスキーの生産規模が縮小されたことで国内への供給を優先し輸出制限がかけられました。

その状況の中で、スコットランドから安くておいしいウイスキーとして、スコッチブレンデッドウイスキーが台頭し、大量生産技術が確立されたことも重なり、多く輸出されるようになり、アメリカを中心に世界的にスコッチウイスキーが広まっていきました。

今は、一時期に比べて蒸留所は少なくなり20に満たない蒸留所の数となりましたが、今なお、世界中に根強いファンが多くおり、5大ウイスキーの一角として一定の人気を誇っています。

●"whiskey"と"whisky"の綴りの違い

ウイスキーの綴りは、アイルランドは"whiskey"、スコットランドやその系譜を持つアメリカなどはwhiskyと記載されています。

しかし、過去にはアイリッシュウイスキーの中にもブッシュミルズなど"whisky"と表記されているものもありました。

アイルランド内で"whiskey"と統一されるようになったのは、諸説ありますが、19世紀ごろ、高品質を謳うためにプロモーションの一環で一部の蒸留所が "whisky" に"e"を入れて販売するようになり、これがアイルランド国内の蒸留所に広まったと言われています。

●アイリッシュウイスキーの特徴

アイリッシュウイスキーは、すっきりと飲みやすく、それでいてオイリーなところが特徴となります。

前述の、アイリッシュ独特の、未発芽の大麦を混ぜるポットスチルウイスキーは、モルト(大麦麦芽)100%でないことで、糖化に時間をかける必要があります。
これが結果的にオイリーな風味を生み出しています。

また、単式蒸留器で3回蒸留することで、雑味が少なくなり、すっきりとしたウイスキーとなっています。 (スコッチは2回の蒸留が一般的)

おすすめのアイリッシュウイスキー

●ジェムソン スタンダード

アイリッシュウイスキーの定番。当店でもアイリッシュの中で最も注文されているウイスキーがジェムソンです。
ミドルトン蒸留所で作られており、ポットスチルウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたブレンデッドウイスキーです。

味は、青リンゴの風味とかすかな酸味があり、もちろんアイリッシュらしいオイリーさも合わせもっています。
後味はほとんど残らずスッキリと飲めます。

値段が手ごろで飲みやすく、アイリッシュの特徴を持っているので、初めてのアイリッシュウイスキーとしてピッタリの一本となります。

●ブラックブッシュ(ブッシュミルズ ブラック)

ブッシュミルズは、アイリッシュの特徴ともいえるの未発芽の大麦は使わずに作られています。
果実やアーモンドのような風味とスパイシーな香りがほのかにしながら、3回蒸留で作られていることで、雑味が少なく飲みやすくなっています。
ピートは使わずに作られており、スモーキーさなどはありません。

●カネマラ

カネマラは大西洋に面した海岸沿いの地名で、ここにあるクーリー蒸留所で作られています。
アイリッシュの異端児とも言われる少し特殊なアイリッシュウイスキーでもあります。

伝統的なアイリッシュウイスキーの製造方法と異なり、2回の蒸留で、さらにピート(泥炭)を焚いて麦芽の発達を止める製法で作る事から、フルーティーさとピートに含まれるヨードの風味を複雑に持ち、スモーキーさも感じさせてくれるウイスキーです。

スコッチウイスキーとは?初めて飲む方へのおすすめも紹介

前回、バーボンウイスキーについてご紹介しましたが、今回は同じく5大ウイスキーの一つ、スコッチウイスキーについてご紹介します。

当店でも、バーボンウイスキーと並んで非常に人気があり、また種類も多く個性も幅広いため、永遠に語れるテーマでもあります。

今回は、初心者の方にもわかりやすく、そしてこれだけ知っていればそこそこウンチクとして使えるように、スコッチウイスキーについてお話いたします!

スコッチウイスキーとは

スコッチウイスキーの定義は、イギリスの法律にて以下のように定義されています。(一部)

  • スコットランド内の蒸留所にて、大麦から糖化・アルコール発酵・蒸留・熟成されている
  • 熟成期間が3年以上
  • 瓶詰時のアルコール度数は40℃以上

細かくは他にも定義されていますが、主な特徴は上記の通りとなります。
一言で言ってしまえば、スコットランドで製造されたウイスキーを指しているわけです。

●スコッチウイスキーの歴史

スコットランドにウイスキー作りが伝わった時期ははっきりとしていませんが(12世紀から13世紀ごろの説が有力)、お隣のアイルランドからキリスト教の布教とともに伝わったとされています。
一方で、スコットランド独自でウイスキー作りが始まっていたという説もあり、現時点で、スコッチとアイリッシュどちらが最初かははきりしていません。

当初は『アクアヴィッテ(=生命の水)』というラテン語で呼ばれ、これをスコットランドで使われていたケルト系言語のゲール語では『ウシュクベーハ』と呼ばれるようになりました。
このウシュクベーハを語源に訛って『ウイスキー』という英語が誕生しました。

ザ・グレンリベット12年 ザ・グレンリベット18年

その後、スコットランド王国はグレートブリテン王国の一部となり、ウイスキーの課税が大幅に上がりました。
課税を逃れるため多くの蒸留所が、密造ウイスキーを作り、結果的に密造ウイスキーがあまりにも広まりすぎたため、1823年に酒税法が改正され税率が引き下げられました。
1824年にはグレンリベット蒸留所が政府公認第一号の蒸留所として認められ、その後次々とその他の蒸留所も公認となることで、密造酒は減っていきました。

密造酒という性質上、いつでも売れるというわけでは無く、長期に樽で保管する事が多く、結果、これが長期熟成としてウイスキーに香りや味をまろやかに深みを与える事になり、スコッチウイスキーの製法として確立されていきました。

シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違い

シングルモルトとブレンデッド、ウイスキーではよく聞く言葉ですが、この言葉は原料と蒸留所の関係が混ざり合いわかりにくくなっています。

まずはウイスキーは原料によって二つに分けられることを理解する必要があります。

●モルトウイスキーとグレーンウイスキーの違い

・モルトウイスキー

『モルト』とは大麦を指し、モルト(大麦)のみで作られたウイスキーをモルトウイスキーと呼びます。

・グレーンウイスキー

グレーンとは大麦以外の穀物で、主にトウモロコシやライ麦、小麦が使われる事が一般的で、これらグレーンでつくったウイスキーをグレーンウイスキーと呼びます。

●シングルモルトウイスキーとは

シングルモルトの"モルト"は上記の通り、大麦で作られたウイスキーという意味になります。
"シングル"は、"一つの"蒸留所でのみ製造されたウイスキーとなります。

したがって、シングルモルトウイスキーとは【一つの蒸留所で作られた大麦のみのウイスキー】という意味となります。

・シングルモルトウイスキーの特徴

一つの蒸留所でのみ作られていることから、銘柄ごとに蒸留所の個性が強く出ており、銘柄が違えば、甘口から辛口なもの、フルーティな香りからピートに強い消毒液のような香りまで、全く別物の飲み物のように風味に違いがでてきます。

●ブレンデットウイスキーとは

ブレンデッドウイスキーは、まず原料は、モルトとグレーンの両方がブレンドされています。
また、蒸留所についても、複数の蒸留所のウイスキーをブレンドし一つの瓶に詰められます。

つまるり、原料と蒸留所両方が"ブレンド"されているウイスキーとなります。

・ブレンデッドウイスキーの特徴

銘柄によって特徴はあるものの、シングルモルトに比べると、ブレンドされることで風味が均一化され、すっきりと飲みやすいという感想を持つ方が多くなります。

●ブレンデッドモルトウイスキー

ここまで話すと「複数の蒸留所で原料をモルトだけのウイスキーは無いのか」という疑問を持たれるかもしれませんが、そういったものも上記二種類に比べると少ないですが存在しています。

こういった、原料はモルトのみで複数の蒸留所のウイスキーをブレンドされたものを『ブレンデッドモルトウイスキー』と呼びます。

同じ意味で他にも『ヴァッテッドモルトウイスキー』『ピュアモルトウイスキー』という言い方がありますが、スコッチにおいては、シングルモルトと混同し、消費者に誤解を生みやすいという事で、現在は使われなくなってきており、ブレンデッドモルトウイスキーに統一されています。

スコッチウイスキーとバーボンウイスキーの違い

スコッチウイスキー同じく有名なのが、5大ウイスキーのひとつでバーボンウイスキーです。
スコッチウイスキーとバーボンウイスキーの違いには以下があげられます。

バーボンウイスキーについて詳しくはこちらにの記事で書いています⇒【ウイスキーのお話し】バーボンとは。スコッチやウイスキーとは違うのか。

●製造場所が違う

スコッチウイスキーはイギリスの法律で、スコットランド内で製造されることが定義されていますが、バーボンウイスキーはアメリカの法律で、アメリカ合衆国内で糖化・発酵・蒸留・熟成したウイスキーと定義されています。

●"ウイスキー"の綴りが違う

スコッチはWhisky
バーボンはWhiskeyと表記されます。

●原料が違う

バーボンは、51%以上がトウモロコシである必要がありますが、スコッチはトウモロコシなども使われますが、主原料は大麦(モルト)となります。

●熟成樽の違い

スコッチは、熟成に使う樽については特に定義がされておらず、個性を出すためあえてワインやシェリー酒、バーボンウイスキーの熟成に使用した中古の樽を使って熟成しています。
バーボンウイスキーは、アメリカの法律で、新品の内側をバーナーで焦がしたオーク樽を使用することが決められています。

●熟成期間の違い

スコッチは、イギリスの法律で3年以上の熟成をする必要があり、10年以上熟成しているものが一般的となっています。
バーボンは、熟成年数については特に定義されておらず、数年程度の熟成で販売されるものが多くなっています。

おすすめスコッチウイスキー

ここまで、スコッチウイスキーについてお話してきましたが、種類が多く何から飲めばよいかわからない!という方向けに、おすすめのスコッチウイスキーを3種類ご紹介します。

●デュワーズ ホワイトラベル

ブレンデッドスコッチの中でも非常に人気のウイスキーで、バーでもハウスボトルとして使っているところが多くあります。
特徴はほのかなチョコレートのような甘さがありながら、スッキリしておりハイボールが合う銘柄となっています。
また、価格もリーズナブルでコストパフォーマンスに非常に優れています。

●ラフロイグ 10年

すっきりと飲みやすいデュワーズから一転、クセを求めたければこのアイラ島で作られたシングルモルトウイスキーのラフロイグがおすすめとなります。
大麦麦芽の乾燥時に使う、泥炭(ピート)に含まれるヨードと、スモーキーな香りが飲む前から強く出ており、初めて飲んだ時は驚くかもしれません。飲む正露丸なんて言われたりもします(笑)
しかし、飲んでみると後味は意外とすっきりと飲めるのも特徴です。
好き嫌いが分かれますが、ラフロイグに一度はまると他のウイスキーは物足りないと感じてしまう不思議な飲み物です。

●グレンフィディック 12年

世界で最も売れているシングルモルトウイスキーと言われ、当店でも人気の高いウイスキーです。
香りはフルーティで洋ナシやリンゴのようなさわやかで、飲んでみても口の中が華やかなまますっきりと飲みやすくなっています。
バーボンウイスキーや、上記のラフロイグのようなのはちょっと苦手、という方も美味しく飲めると思います。
当店では、女性にも人気となっています。

【ウイスキーのお話し】バーボンとは。スコッチやウイスキーとは違うのか。

お客様からの質問などで、たまに
「バーボンとスコッチってウイスキーなの?違いはあるの?」
「バーボンとウイスキーって何が違うの?」
と聞かれる事があります。

言葉では『バーボン』と聞いたことがあっても詳しくはご存じない方も多いのではないかと思います。

今回はそんな『バーボン』についてのお話です。
後半には、バーボンを試したいけど何から飲めば良いかわからない、といった方向けに、おすすめのバーボンウイスキーもご紹介します。

バーボンとは

『バーボン』は正確には『バーボンウイスキー』と言い、名前の通りウイスキーの一種です。

バーボンとウイスキーを別物と認識されている方がいらっしゃいますが、あくまでウイスキーであり、その中のバーボンウイスキーという種類になります。

●ウイスキーとは

ウイスキーとは穀物(大麦、ライ麦、トウモロコシなど)を糖化・アルコール発酵させ、蒸留した飲料をウイスキーと呼びます。

細かな定義は国によって異なりますが、一般的には上記のように穀物の蒸留酒で樽で数年以上熟成させたものとなります。

蒸留酒については別記事で解説しています⇒醸造酒と蒸留酒の違いとは

●バーボンウイスキーの定義

バーボンウイスキーはアメリカ法律で定められており、主な内容は以下となります。

  • 製造はアメリカ合衆国のみ
  • 原料の51%以上がトウモロコシ
  • 熟成には内側を焦がした新品のオーク樽を使用
  • 瓶詰された状態でのアルコール度数が40%以上

細かくは他にも定められていますが、上記の通り、アメリカで作られた主原料がトウモロコシで新品の内側を焦がした樽で熟成されたウイスキーがバーボンとなるわけです。

逆にこれらを一つでも当てはまらないものがあればバーボンウイスキーとは呼べません。

●バーボンウイスキーの歴史

エライジャ・クレイグ スモールバッチ

バーボンウイスキーは、1789年、アメリカ合衆国のケンタッキー州の牧師、エライジャ・クレイグ氏によって作られました。

クレイグ氏は牧師として活動する一方、ウイスキーも作っていましたが、ある時たまたま樽の内側を焦がしたものを熟成に使った事からバーボンウイスキーが始まりました。

この製法が広がり、後に、クレイグ氏は『バーボンの父』と呼ばれるようになりました。

●バーボンの由来

バーボンの由来は、フランスのブルボン朝が由来となっています。

アメリカ独立戦争の際、フランスはアメリカ側に付いたことから、アメリカがフランスへの感謝の気持ちを込めてケンタッキー州のとある郡を【バーボン郡】と名付けました。

この地で、エライジャ・クレイグ氏がウイスキーを作り広まったことから、このウイスキーを「バーボン・ウイスキー」と呼ぶようになりました。

このような歴史的背景もありバーボンウイスキーと言えば、ケンタッキー州のイメージが強いですが、上記のアメリカの法律の通り、ケンタッキー州に限らず、アメリカ合衆国内で製造されていれば、バーボンウイスキーと呼ぶことが出来ます。

●バーボンウイスキーの種類

バーボンウイスキー熟成期間や製造場所ブレンド内容によって以下のような呼び方があります。

  • シングルバレル・バーボン・・・一つの樽からのみで瓶詰されたウイスキー
  • スモールバッチ・バーボン・・・数種類~10種程度の少量の樽からブレンドしたものを瓶詰したウイスキー
  • ストレート・バーボン・・・2年以上熟成させたバーボンウイスキー
  • ケンタッキー・ストレート・バーボン・・・ケンタッキー州で製造されたバーボンウイスキー

バーボンとスコッチの違い

バーボンウイスキーと並んで有名なウイスキーと言えば、5大ウイスキーのひとつであるスコッチウイスキーがありますが、バーボンウイスキーとは以下のような違いがあります。

●製造場所が違う

バーボンウイスキーはアメリカとなりますが、スコッチウイスキーはスコットランドで糖化・発酵・蒸留・熟成したウイスキーを指します。

●ウイスキーの綴りが違う

バーボンはWhiskey、スコッチはWhiskyと表記される。

これは、元々アイルランドで作られていたアイリッシュウイスキーは綴りをWhiskeyとしており、アイルランド系の移民がアメリカにわたりウイスキー作りを始めたため、アイルランドと同じ表記となっています。

●原料が違う

バーボンは、51%以上がトウモロコシである必要がありますが、スコッチの主原料は大麦(モルト)となります。

●熟成樽の違い

熟成に使われる樽が、バーボンは新品の内側を焦がした樽を使用しますが、スコッチはシェリー酒やワイン、バーボンウイスキーの熟成で使用した中古の樽を使って熟成をします。

これにより、どのような樽を使うかが、スコッチの個性の一つともなってきます。

●熟成期間の違い

バーボンは、熟成年数については特に定義されていません。
スコッチは3年以上の熟成をする必要があります。

一般的には、バーボンは数年程度、スコッチは10年以上熟成させているものが多くなります。

おすすめのバーボンウイスキー

最後にバーボンウイスキーをあまりご存じない方におすすめする、バーボンウイスキーを4つご紹介します。

●I.W.ハーパー ゴールドメダル

バーボン初心者にお勧めです。
ケンタッキー州のヘブンヒル蒸留所のウイスキー。
トウモロコシの使用比率が、86%と高くトモウロコシの甘味があり、バーボンの中では比較的飲みやすいウイスキーとなります。

●ワイルドターキー 8年

バーボンウイスキーの定番。
バーボンの中では、トウモロコシの使用比率が低く、ライ麦が多く使用されています。
ライ麦の特徴であるドライでスパイシーな刺激のある風味を持ちバーボンらしい力強さを感じる事ができるウイスキーです。

●エライジャ・クレイグ スモールバッチ

バーボンウイスキーの父エライジャ・クレイグ氏の名前がそのままつけられたウイスキー。
香ばしく、焦がした樽の香りが感じられ、まろやかな甘味が特徴で飲みやすいバーボンウイスキーです。

●ブラントン シングルバレルバーボン

バーボンが苦手という方もこれは飲める方が多く、当店では女性にも人気のバーボンウイスキー。上品で深い甘味と焦がし樽の香りが特徴。
ブラントンは必ずシングルバレル(一つの樽からのみ)作られていることが特徴で、ボトルによっても個性がありこの違い試すのも、ブラントンの楽しみ方です。

【バーのマスターによる】おいしいハイボールの作り方。たった2つのポイント。

こんにちは。
お初天神 バー・ザ・メモリー、マスターの銭谷です。

最近はハイボールを家で自分で作って飲まれる方も多いようで、お客様から、家でもハイボールを作るけど同じウイスキーの銘柄なのに、お店で飲むのと違う、といわれる事がよくあります。

お店ではお金をいただく以上、重箱の隅をつつくレベルであれこれこだわっていますが、基本的に気を付けるべきポイントはシンプルで、家でも十分に美味しく作る事が出来ます。

美味しいハイボール作りのポイントは2つ

  • 冷やせるものは出来るだけ先に冷やす
  • 出来る限り炭酸が抜けないようにする

このたった2つのポイントを意識するだけで、おいしいハイボールが作れます。

ということで、今回は家でも出来るおいしいハイボール作りを紹介いたします。

①グラスを冷やす

まずグラスに氷を入れます。
氷だけをいれた状態で、バースプーン(なければ、マドラーでもお箸でもOK)で、ぐるぐると氷をかき混ぜグラスを冷やします。

目安は、グラスがうっすら白く曇ってきたら大丈夫です。

この時点で、氷が溶けて水がグラスの底に溜まっているようなら、いったんこの水をしっかり切ります。

②ウイスキーを注ぐ

次に、ウイスキーを注ぎます。
分量はお好みですが、一般的にはウイスキーとソーダの割合は、1:2.5~3ぐらいが目安となります。

ウイスキーを注ぐ時のポイントは、氷の霜を取るように氷にあてながらウイスキーを注ぎます。
氷の霜は、このあとソーダを入れる際にソーダと触れることで炭酸の抜ける要因となるので、ウイスキーを氷にあてることで、その要因となる霜を出来るだけ取っておきます。

③ウイスキーを冷やす

グラスに氷とウイスキーが入った状態で、再度氷をぐるぐるとかき混ぜ、ウイスキーを冷やします。
回す回数は10回転ぐらいを目安にしてください。

④ソーダをゆっくり注ぐ

ソーダは事前に冷蔵庫で冷やしておいてください。

ソーダを注ぐ際は、バースプーン(なければ普通のスプーン)の腹の部分を使い、ソーダを少しずつスプーンの腹にあてながら注ぎます。

理由は2点

  • ソーダを注ぐ時のショックをやわらげ出来るだけ炭酸が抜けないようにする事
  • 氷(の霜)に炭酸をあてないように(抜けないように)する事

⑤最後は混ぜなくてよい

ソーダでグラスを満たせば、最後はバースプーンやマドラーなどでグラスの底まで突っ込み1,2回ゆっくり上げ下げして完成です。

アルコールは炭酸よりも比重が軽く、また炭酸の泡によって、特に混ぜなくても勝手に混ざります。
なので、あえて混ぜるような事をしても炭酸が抜けるだけで、あまり意味はありません。

最後に

当店でも実践しているハイボールの作り方をご紹介しました。

ハイボールの作り方は千差万別、色々な考えの元、色々な作り方があります。
ここで紹介したのは、その多くある作り方の中の、あくまで当店お初天神 バー・ザ・メモリーとしての考えの上でお作りしているレシピとなります。

ハイボールはシンプルなようで奥が深い飲み物です。
ウイスキーの銘柄をどうするか、ソーダは弱炭酸か強炭酸か、などでも大きくかわってきます。
この辺は好みに左右されるところなので、あえて今回は説明しませんでした。

お店によって、作り方の違いなどを見て、またその違いがなぜあるのか、飲むときにはどう影響するのか、そんなことを考えてバーで飲んだり、家であれこれ試しながら作ってみると、より一層ハイボールを楽しむことができます。

是非、自分にとってのおいしいハイボール作りにチャレンジしてみてください!