「ジントニックを頼めば、そのバーの事がわかる」
なんて言葉、聞いたことあるでしょうか。
はたまた、バーテンダー側からすると
「1杯目にジントニックを頼む人はお店を試している」
なんて言葉も。
この言葉のせいで、私は普通に飲みたくて1杯目にジントニック頼みたいのに、同業者として頼みづらくなりました(笑)
(自分が店側でお客様から一杯目に頼まれた時は、全く気にしませんが)
本当にジントニックでバーがわかるのでしょうか。
今回はそんなどこにでもあるジントニックから見えてくるポイントを説明したいと思います。
別記事にジントニックの材料や作り方があるので、先にそちらを見ていただいた方がわかりやすいと思います。⇒【カクテルレシピ】ジン・トニック(1分で読めます)
ジントニックはどこのバーでもある
実は最重要。
バーの違いを知るには、そえぞれのバーで同じものを頼まないと、違いが分かりにくいものです。
そういう意味では、カクテルの中でもジントニックは比較的どこのバーにも置いているカクテルと言え、注文がしやすいのが特徴です。
炭酸に対する考え方が見えてくる
【おいしいハイボールの作り方】の記事でも書きましたが、炭酸(トニックウォーター)の扱いは気を使う必要があります。
炭酸の扱いを見れば、いかに炭酸が抜けないように扱っているか、アルコールとの特性の違いを理解しているかが見えてきます。
【おいしいハイボールの作り方】では、出来るだけ炭酸にショックを与えないように扱うように書きましたが、あえてジンにドボドボと流し込み、ジンの香りをより引き立つように注ぐバーもあります。
- 無駄に混ぜないなど、炭酸とアルコールの特性を理解して作っているか
- ショックをあたえずに注ぐのか(炭酸が抜けないことを優先する)
- あえてドボドボ注ぐのか(香り立ちを優先する)
炭酸の扱いだけでも、それぞれの考え方が見えてくるわけです。
ジン"トニック"はトニックだけとは限らない
ジントニックは、名前の通りジンをトニックウォーターで割ったシンプルなカクテルです。
が、トニックウォーターだけでなく、ソーダも使うことが良くあります。
トニックウォーターは甘味のある炭酸なので、甘味を少し抑えたい場合などは、トニックウォーターの量を減らし、ソーダを入れます。
- トニックウォーターだけなのか
- ソーダも使うのか
- 使う場合は割合はどのくらいか
そんなところもバーによって変わってきます。
ちなみに、ソーダも入れる場合、ジントニックと区別するため【ジンソニック】なんて言い方をする事もあります。
果汁・ジュースで好みが見える
ジントニックは、ライムの果汁又は市販のジュースも入ります。
これも何をどう扱うかで風味が大きく変わってきます。
- 生ライムの果汁を使うか
- 市販されているライムジュースを使うか
- 分量はどのくらい入れるか
- ライム自体をカクテルの中に入れるか入れないか
市販されているライムジュースは甘味があり、生ライムを使うと香りが華やかになります。
ライム自体をカクテルの中にいれると、ライムの香りがより広がりますが、逆に香りが強すぎるという人もいると思います。
これもまた良い悪いではなく好み、バーそれぞれの考えの違いとなります。
ジンのハウスボトルは何を使うのか
ここまでの話だと、ジントニックでなくても、ウォッカトニックでもテキーラトニックでも良さそうに思います。
「ジントニックを頼めばバーがわかる」と言われる所以は、ハウスボトルとしてのジンの選択肢が多い事でしょう。
ハウスボトルとは、お客様からジンの銘柄指定が特に無い場合に、使う銘柄を指します。
どのバーにも、ジンのハウスボトル、ウォッカのハウスボトル、テキーラのハウスボトル、といった具体にそれぞれでハウスボトルを決めていますが、ジンは他のウォッカ、テキーラ、ラムを含めた4大スピリッツの中で、比較的種類が多くあります。
例えば、某大手全国チェーンの酒屋の販売サイトを見ると4大スピリッツの種類は以下となっていました。
ジン:34種
ウォッカ:25種
テキーラ:18種
ラム:20種
このように、ジンの取り扱いが一番多いことが多く、それだけハウスボトルの選択肢も広くなっており、考え方に違いが出てくる部分となるわけです。
●ハウスボトルの見方。良い・悪いは無い!
例えば
- 価格が高く、ジンらしいボタニカルの風味が強い"T"
- 価格がリーズナブルで、"T"ほど風味は無い、すっきりとした"G"
の2種類のジンがあるとします。
一見すると、ハウスボトルに
高い"T"を使っていたら「お、良いジン使ってるね!ここは良いバーだ!」
安い"G"を使っていたら「なんだ、ここは安もんのジン使ってるのか。」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、高いTと安いGの特徴は言い換えると
- 高いTは、ジンのクセが強く、苦手な人もいる
- 安いGは、強いクセはなく、比較的万人受けしやすい
とも言えるわけです。
つまり、安いGを使っているバーは、
単に安いから使っているのかもしれませんが、
銘柄指定されずに使うハウスボトルだからこそ、万人受けしてかつリーズナブルに飲める銘柄をあえて選んでいる、とも考えられるのです。
はたして、ハウスボトルに最初から高いものを使うことが本当に良いのでしょうか。
高いボトルを使うという事は当然その分、1杯の料金も上がります。
今回は分かりやすく極端な2種類で説明しましたが、上記の通り、ジンは多くの種類があるので、この微妙な塩梅をどうとるか、バーにより色々見えてくるわけです。
ちなみに、一般的なバーでは、ハウスボトル以外にも、いくつかの種類のジンを置いてあり、指定さえあれば、お好みのジンでジントニックを作ってもらえると思います。
最後に
どこにでもあるシンプルなカクテル、ジントニックですが、意外と奥が深く、作り手の色々な考え方が見えてくることがわかっていただけたかと思います。
シンプルだからこそ違いがわかりやすく
シンプルでありながら、個々の材料を何にするか、材料をどう扱うかで大きく変わってくるカクテルというわけです。
どれが正しいか間違っているかではなく、それぞれの考え方を探りながら飲んでみると、ジントニックがよりおいしく感じると思います。