ジャパニーズウイスキーとは?日本のウイスキーの歴史と現在のブームの背景も解説

ジャパニーズウイスキー、つまり日本のウイスキーは、もともとの世界的な評価はそれほど良くなく、スコッチなどに比べて品質が悪いとされていました。

それが、2000年以降次々と世界的賞を受賞し、日本国内だけでなく世界的に急激に人気が上がり、ここ数年は生産が追い付かず国内メーカー各社とも、あいついで休売・終売が発表されています。

今回はそんなジャパニーズウイスキーとはそもそもどんなウイスキーなのか、そして、始まりから現在の5大ウイスキーの一角となるまでの歴史や背景についてもお話していきます!

ジャパニーズウイスキーとは

ジャパニーズ・ウイスキーの定義は、スコッチ(関連記事)やバーボン(関連記事)などと違い、法律で明確に定められているわけではありません。

酒税法上は、10%ウイスキーが入っていれば、あとは他のスピリッツなどでブレンドされていてもジャパニーズウイスキーと言えてしまう程、緩いものとなっています。

また、産地の表記なども必要が無いため、海外で蒸留されたウイスキーを日本で熟成して瓶詰してもジャパニーズウイスキーとして販売が可能となっています。

つまり、国外で蒸留されたウイスキーを10%あとの90%をウォッカでブレンドしたものも日本で瓶詰めすれば、ジャパニーズウイスキーとして販売が可能となっています。

●ジャパニーズウイスキーの定義化の動き

上記のように法的に厳密な定義が無いことから、消費者へ誤解を与えてしまうなど、問題視する声が大きくなってきたことで、民間レベルでジャパニーズウイスキーの明確な定義に向けての動きが出てきました。

2019年には、ウイスキー・スピリッツの品評会である、東京ウイスキー&スピリッツコンペティションよりジャパニーズウイスキーを以下の3つカテゴリに分けて定義が発表されました。

①ジャパニーズウイスキー(日本ウイスキー)

  • 原料は穀物で、大麦麦芽の酵素または天然由来の酵素によって糖化を行う。
  • 酵母によってアルコール発酵を行う。
  • アルコール度数95%未満で蒸留を行う。
  • 熟成は木製の樽または容器で2年以上行う。
  • 瓶詰時のアルコール度数は40度以上で、色素調整のための天然カラメルの添加は認めらる。

これらを全て満たし、日本国内の蒸留所で、糖化・発酵・蒸留・熟成が行われているもの。

②ジャパニーズニューメイクウイスキー(日本ニューメイクウイスキー)

熟成期間が2年未満で、そのほかの条件は、①ジャパニーズウイスキーの条件を全て満たしているもの。

③ジャパンメイドウイスキー(日本製ウイスキー)      

外国産のウイスキーをジャパニーズウイスキーとブレンドし日本国内で瓶詰したウイスキー。
"外国産のウイスキー"については、穀物を原料とした蒸留酒で木製の樽または容器で熟成したものであること。

ジャパニーズウイスキーの種類

ジャパニーズウイスキーには、原料の違いによっても種類がわけられます。

●モルトウイスキー

大麦麦芽(モルト)のみを原料とし単式蒸留器で作られたウイスキー。
一つの蒸留所で作られたモルトウイスキーのみを瓶詰したものをシングルモルトウイスキー、複数の蒸留所のモルトウイスキーをブレンドして瓶詰したものを、ブレンデッドモルトウイスキー(ピュアモルトウイスキー、ヴァッテッドモルトウイスキー)と呼ぶ。

モルトのみでかつ単式蒸留のため、それぞれ個性が強く出やすいのが特徴。

●グレーンウイスキー

大麦麦芽に加えて、トウモロコシ・ライ麦・小麦など他の穀物も原料とし、連続式蒸留器で蒸留されたウイスキー。
複数の原料をブレンドしかつ連続式蒸留器で蒸留されることで、すっきりとした風味で飲みやすいのが特徴。

●ブレンデッドウイスキー

モルトウイスキーとグレーンウイスキーを複数種類ブレンドしたウイスキー。
モルトウイスキーの個性をしっかりもたせながら、グレーンウイスキーをブレンドすることで飲みやすく作られているものが多い。

ジャパニーズウイスキーの味・特徴

ジャパニーズウイスキーにも多種多様ではありますが、全体的な傾向としては、スコッチの流れを汲みながら、日本人の嗜好に合わせて飲みやすいウイスキー作りがされています。

また、ジャパニーズウイスキー広がりとともに飲み方も日本独自で発展し、ソーダ割り(ハイボール)、水割りやお湯割りといった多様な飲み方をされることも海外に比べて特徴的です。

日本のウイスキー誕生の歴史

日本にウイスキーが伝わったのは、1853年、江戸末期にアメリカ合衆国のマシュー・ペリー氏率いる艦隊が日本の開国を求めて浦賀に来た時、日本の幕府関係者にウイスキーを振舞ったり、徳川幕府に献上されたと言われています。

その後、1871年にはウイスキーの輸入が始まりましたが、明治に入ってもそれほど広まってはいませんでした。

1899年、鳥井信治郎氏により、のちにサントリーとなる、当時は洋酒の輸入販売と捏造ウイスキーを製造販売を主に行っていた、鳥居商店が創業しました。

鳥居商店は1906年には寿屋洋酒店に名前を変更し、赤玉ポートワインやトリスウイスキーといったヒット商品を出すようになりましたが、鳥居氏は、さらに純国産のウイスキー製造をするため、国内に蒸留所を建てる事を目指すようになりました。

一方、1918年、大阪府のにあった摂津酒造でも同様に純国産ウイスキーを作る計画が立ち上がり、摂津酒造の技師であった竹鶴政孝氏がウイスキー作りを学ぶためスコットランドに派遣されました。

竹鶴氏は帰国後、スコットランドで学んだ内容を報告書にまとめ会社提出しましたが、摂津酒造は資金難に陥っており、国産のウイスキー作りは断念しざるを得ず、竹鶴氏は志半ばで摂津酒造を退職する事となりました。

大正時代に入り、寿屋は蒸留所の建設のため技師を探していたところ、当初はスコットランドから技師を招く予定でしたが、スコットランドで学んでいた竹鶴氏が帰国していたことを知り、竹鶴氏も国産ウイスキー作りの夢を捨てていなかったことから、1923年に寿屋への入社が決定しました。

1924年には、寿屋は大阪府三島郡に山崎蒸留所を建設、蒸留を開始しました。
1929年、この山崎蒸留所で作られた、日本初の国産ウイスキー『白札』が販売開始、1937年には『角瓶』が発売され、国産ウイスキーの歴史が始まりました。

竹鶴氏は、1934年、当初の寿屋との契約期間10年が経ち、また竹鶴氏自身で理想のウイスキー作りを目指すため、寿屋を退職、大日本果汁(現在のニッカウヰスキー)を設立、北海道の余市に余市蒸留所を設立し、1940年にこの余市蒸留所で作られた『ニッカウヰスキー』を販売しました。

戦後も多くの国産ウイスキーが販売され、日本の復興、高度経済成長に合わせるように国産ウイスキーの需要も多少の上がり下がりはありながらも少しずつ増え続けていましたが、2010年以降は急激なブームとなり、多くのウイスキーが供給が追い付かないほどとなりました。

今や、日本国内だけでなく世界的に日本のウイスキーの人気が高まり、アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、カナディアンと並んでジャパニーズウイスキーとして5大ウイスキーの一つとして呼ばれるようにまでなりました。

ジャパニーズウイスキーブームの理由

ジャパニーズウイスキーの誕生から、時代と共に徐々には需要が上がってきましたが、2010年に入ってからは急激な需要の増加となり、生産が追い付かず終売・休売を余儀なくされるウイスキーが多く出てきています。

このジャパニーズウイスキーブームの理由は大きく以下の3つが考え得られます。

■ハイボールブームによる需要増加
もともとウイスキーは、食事中心の1件目ではなく、ドリンク中心の2件目、3件目としてバーなどで飲まれていました。
ここにサントリーなどが、ソーダで割る(ハイボール)などで食事と合わせて飲む形でプロモーションを積極的に行い、近年の健康ブーム、糖質制限ダイエットの流れもあり、1件目の食事と一緒にハイボールを飲むという文化が定着しました。

NHK朝ドラ『マッサン』による認知効果
2014年から2015年にかけてNHKで放送された朝の連続テレビ小説『マッサン』でニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏が取り上げられたことで、それまでウイスキーに馴染みがなかった人たちにも、ニッカウヰスキーをはじめ国産ウイスキーが認知されるようになりました。

世界的賞の受賞により海外での需要の高まり
2000年以降、ニッカウヰスキーやサントリーのウイスキーを中心に、世界レベルの権威ある賞を毎年のように受賞するようになりました。
これにより、それまで日本のウイスキーはそれほど評価が高くなかった海外でも、見直され多く飲まれるようになりました。

ウイスキー作りには、どうしても熟成期間が必要なこともあり、10年、20年先を見て作る必要がありますが、あまりにも急激なブームのだったため、生産計画とズレが出来てしまい、現在の供給不足という結果になっています。

現在各社とも、増産に動いていますが、世の中に出回るにはまだ数年から10年程度かかる見込みです。

代表的なジャパニーズウイスキーの銘柄

●響

2004年のISC金賞(響21年)、最高賞(響30年)の受賞に始まり、毎年のように世界的賞を受賞し続けていた、日本を代表するブレンデッドウイスキーです。

山崎蒸留所、白州蒸留所のモルトウイスキーと知多蒸留所のグレーンウイスキーをブレンドしており、味はフルーティで甘みのある味にほんのりとスモーキーに、香りはコルクを抜いた瞬間から一気に華やかで甘い香りにつつまれます。

現在のラインナップは、サントリーの公式ホームページ上では、
ノンエイジのジャパニーズハーモニー、ブレンダーズチョイスと、響21年、響30年となっていますが、いずれも品不足気味となっています。

●山崎

山崎蒸留所で作られているシングルモルトウイスキー。
発売当初、日本ではブレンデッドウイスキー全盛で一部の愛好家に飲まれる程度にとどまっていましたが、徐々に山崎の良さが受け入れられ人気が出るようになりました。
ジャパニーズシングルモルトウイスキーの牽引役のような存在とも言えます。

バニラやシナモンのような甘味と桃のような甘くフルーティな香りが特徴。

現在のラインナップは
ノンエイジの山崎と、山崎12年、山崎18年、山崎25年。

●竹鶴

ニッカウヰスキーの創業者の名前が付けられた"ピュアモルトウイスキー"

ピュアモルトウイスキーとは、複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーをブレンドして作られたものを指します。
モルトウイスキーでありながら、ブレンドされることで非常に飲みやすいのが特徴。

味は梨のようなフルーティさの奥に余市蒸留所のウイスキーを連想させるスパイシーさをかすかに感じます。

2020年3月でそれまでのラインナップであった、
竹鶴17年、竹鶴21年、竹鶴25年が休売、ノンエイジの竹鶴がリニューアルされます。

竹鶴についてはこちらの記事に詳しく書いています⇒ウイスキー竹鶴とは。終売の背景と竹鶴氏・ニッカウヰスキーについても解説。

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