ジャック・ダニエルはバーボンでは無い。が、バーボンである理由。

「ジャック・ダニエルはバーボンではない」
ウイスキーに詳しい方からたまにこういう話を聞きます

アメリカのウイスキーはバーボンウイスキーのイメージが強く、
アメリカンウイスキー=バーボンウイスキー
と思われている方も多くいらっしゃいます。

つまりはアメリカのウイスキーであるジャック・ダニエルはバーボンウイスキーと思われている方が多くいらっしゃることに対して、冒頭の会話が出てくるわけです。

実際のところは、
"ジャック・ダニエルはバーボンウイスキーでは無い"
というのは正解です。

でも、見方を変えると、実はジャック・ダニエルはバーボンウイスキーとも言えるのです。
矛盾した説明に聞こえると思いますが、今回はジャック・ダニエル、そしてバーボンウイスキー、テネシーウイスキーの関係についてお話いたします。

ジャック・ダニエルとは

ジャック・ダニエル(ウイスキー)は、アメリカ合衆国テネシー州リンチバーグにあるジャック・ダニエル蒸留所で作られているウイスキーで、名前はこの蒸留所と製造メーカーであるジャック・ダニエル社の創始者でもある、ジャスパー・ニュートン・ジャック・ダニエル氏の名前から由来しています。

ジャック・ダニエル氏は貧困家庭の産まれであったことから、牧師の傍ら蒸留所のオーナーでもあったダン・コール氏のもとに幼少時から預けられ働いていました。

1863年には、当時13歳でジャック・ダニエル氏が、ダン・コール氏の持つ蒸留所を譲り受け、本格的に「ジャック・ダニエル」という名のウイスキーを作り始めました。

1904年には、ミズーリ州で開催されたセントルイス万博に【ジャック・ダニエル オールドN0.7】を出品、金賞を受賞しました。

以降、知名度・人気ともあがり続けましたが、1920年、アメリカ合衆国で禁酒法が施行されたことで蒸留所が閉鎖され、再建を試みるもブラウン・フォーマン社に買収されることとなりました。
しかし、紆余曲折がありながらも、ジャック・ダニエルの人気は根強く、現在、ジャック・ダニエル No.7は世界で最も売れているウイスキー銘柄となっています。

●チャコール・メローイング製法

チャコール・メローイング製法とは、ジャック・ダニエルの生産地でもある、テネシー州での伝統的な製法でもあり、蒸留後の原酒(ニューポット)を、サトウカエデの木炭が敷き詰められた濾過槽に少しづつ垂らしながら、ろ過を行う工程を言います。

この工程により、ジャック・ダニエルの特徴ともいえる、口当たりはなめらかで、カラメルのようなほろ苦さと甘さ、そしてコクが生まれます。

ジャック・ダニエルはバーボンウイスキーでは無い理由

ジャック・ダニエルがバーボンウイスキーでは無い理由は非常に単純で、ジャック・ダニエル自身がバーボンであることを否定しているからです。
ジャック・ダニエルはキャッチコピーに

"IT'S NOT SCOTCH. IT'S NOT BOURBON. IT'S JACK."
(スコッチでもない。バーボンでもない。ジャックダニエル)

と掲げています。
つまり、ジャック・ダニエル自身が「バーボンでは無い」と言っているわけです。

ラベルにもある通り、ジャック・ダニエルは"テネシーウイスキー"を名乗って販売されています。

ジャック・ダニエルがバーボンウイスキーと言える理由

上で、自らバーボンであることを否定していますが、ジャック・ダニエルは見方によってはバーボンウイスキーとも言えます。
その理由は、バーボンウイスキーの定義にあります。

バーボンウイスキーの定義はアメリカ合衆国の法律で以下のように決められています。

  • アメリカ合衆国で製造されていること
  • トウモロコシの含有量が51%以上であること
  • 蒸留時のアルコール度数は80%以下であること
  • 熟成には、新品のオーク樽を使用し内側を炭化皮膜処理(焦がして処理)すること
  • 熟成時、樽に入れる前のアルコール度数は62.5%以下であること
  • 瓶詰時のアルコール度数は40%以上であること

これらを満たすことで、法律上バーボンウイスキーを名乗ることが許されます。

そして、ジャック・ダニエルはこの条件を全て満たしています。
したがって、定義上はジャック・ダニエルはバーボンウイスキーと言えるのです。

一方、ジャック・ダニエルが自ら名乗っている、テネシーウイスキーの一般的な定義は、上記のバーボンウイスキーの定義に加えて

  • テネシー州で製造していること
  • 蒸留後の原酒をサトウカエデの木炭でろ過している(チャコール・メローイング製法を行っている)こと

の二つが加わります。
(テネシーウイスキーに明確な定義は無く、チャコール・メローイング製法を行わないテネシーウイスキーもあります)

定義上の観点では、ジャック・ダニエルは、テネシーウイスキーでありバーボンウイスキーでもある、というわけです。

バーボンウイスキーについてはこちらの記事に詳しく書いています。⇒【ウイスキーのお話し】バーボンとは。スコッチやウイスキーとは違うのか。

なぜジャックダニエルはテネシーウイスキーにこだわるのか

ジャック・ダニエルは、バーボンウイスキーと名乗れるにもかかわらず、単に名乗らないどころか

「IT'S NOT BOURBON」
と、はっきりと否定しています。

バーボンを名乗らない、というよりはわざわざ掲げられている、この否定に強い意志すら感じます。

この理由を探るには、テネシー州とバーボンウイスキーの発祥地であるケンタッキー州の歴史的関係が絡んできます。

1861年から1865年、アメリカ合衆国は南北で二分した大きな内戦、南北戦争がありました。

この時、テネシー州は南側につき、隣のケンタッキー州は当初南側でしたが寝がえり北側につきました。
結果、この二つの州の境目は最前線となり激しい戦いに巻き込まれテネシー州は壊滅的なほどの被害が出てしまいました。
一方で、有利に戦いを進めた北側についたケンタッキー州は軽微な被害で済みました。

この南北戦争真っただ中の1863年、13歳のジャック・ダニエル氏は蒸留所を譲り受け、本格的なウイスキー作りを始めたのでした。

ジャック・ダニエル氏は、故郷の苦難の中でウイスキー作りを始め、その背景からバーボンの名は使わず、あくまで故郷であるテネシー州のウイスキーとして名を挙げる強い思いを込めて、ウイスキー作りを行うようになったのでした。

最後に

今回は、ジャック・ダニエルについて、そしてテネシーウイスキーとバーボンウイスキーの関係についてお話してきました。

ジャック・ダニエルは、テネシーウイスキーでありながら、定義上はバーボンウイスキーとも言えます。

しかし、自らバーボンである事を否定し、テネシーウイスキーとして販売をしています。
これには、ウイスキー作りを超えた、歴史的苦難とそれに対する不屈の精神、そして強いアイデンティティーを主張している背景があります。

そんな思いに馳せながら、ジャック・ダニエルを飲んでみると、また一段と美味しく感じるのではないでしょうか。

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